不妊症治療1
不妊症治療ー最近の事情(1) (読売新聞朝刊 9/12)
| つらい検査 募る不安 |
| 「そろそろ子供が欲しいね」。東京都在住の主婦Aさん(36)は、結婚3年目の97年ごろから、夫とそう話し合った。ところが、避妊をしなくなって1年 たっても、妊娠の兆しがない。「結婚したら子供が生まれるものと思っていたのに・・・・。不妊に関する本をこっそり読みあさりました」 |
| 昨年春、書籍に載っていた近所の病院を訪ねた。相談だけのつもりだったが、「検査をしましょう」という医師の言葉で、「レールに乗せられるように」(Aさん)検査が始まった。 |
| 「一定期間、子供を切望しながら、妊娠できずに悩む」状態を「不妊症」と呼ぶ。一定期間の目安は2年だが、高齢などの場合は、1年目でも治療対象になる。 |
| 治療は、原因を特定することから始まる。「夫婦生活や月経周期、過去の疾患などを聞くことで、ある程度原因がつかめる」と、東大産婦人科助手の藤原敏博さん(39)。「排卵の指標となる基礎体温に留意して性生活をするだけで解決することもある」と言う。 |
| しかし、大半の患者は、様々な検査を受け、1つ1つ原因を調べていくことになる。不妊の女性側の原因としては、①卵巣の機能が低く、排卵がない ②卵管の 通りが悪い ③受精卵が着床しにくい ④子宮入り口の子宮頚管などに問題があり、精子が子宮内に進入できないーがある。 |
| ホルモン分泌や卵巣、子宮などの状態を調べるが、基礎体温の変動に合わせた特定の時期に検査する。 |
| これから受けたAさんは、「検査は痛いし、排卵日次第だから時間もかかる。性交後に内診を受ける必要もある。こんなにつらくて大変だとは思わなかった」と言う。 |
| 例えば、卵管内の通りの良さを見る検査。子宮から炭酸ガスを通す通気法、造影剤を注入してエックス線撮影をする子宮卵管造影法があるが、前者では肩甲骨の痛み、後者でも腹痛などが起こる。 |
| しかし、Aさんが受診した病院ではこうした説明が不十分で、造影検査後の4日間、高熱と腹痛に苦しんだ。「検査で繰り返し医師に体に触れられ、慰めてくれる夫の手すらうとましかった」 |
| 排卵日が病院の休診日と重なったりして、早ければ2か月で済む検査一式を終えるまで半年。結局、本人にも夫にも異常がみつからず、今年7月、排卵に合わせ、夫の精子を子宮内に注入する人工授精を開始。これまで2回行ったが、妊娠に至っていない。 |
| 「排卵は月1回しかなく、治療は時間との闘い。以前は不妊治療を受ける人たちを見て『そこまでする?』と思ったけど、自分が当事者になって、その気持ちが分かった。先の見えない不安を知って欲しい」とAさんは語る。 |
| 東大産婦人科教授の武谷雄二さん(53)によると、不妊症の夫婦は、いつの時代も10組に1組はいたが、結婚・出産を希望する年齢が高くなるにつれ、今後さらに増えるとみられる。 |
| 最近の不妊症治療の事情を報告する。 |
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不妊症治療2
不妊症治療ー最近の事情(2) (読売新聞朝刊 9/13)
| 検査も手術も腹腔鏡で |
| 不妊症は、ホルモン分泌などの検査をしても原因が分からないことが少なくない。そこで最近、「腹腔鏡検査」が行われるようになってきた。従来の方法では分かりにくかった卵巣や卵管などの様子を直接見ることができ、威力を発揮する。 |
| 大阪府内の会社員、Bさん(34)は、不妊症のため、97年初めに医療機関を受診した。卵子の通り道を調べる子宮卵管造影検査などを受けたが、異常はみつからなかった。 |
| 近畿大産婦人科の星合昊さん(54)によると、この造影検査がきっかけで卵管の通りが良くなる場合があり、検査後の半年間に3割ほどの人が妊娠する。 |
| だが、Bさんは半年以上しても妊娠せず、98年8月、星合さんのもとを訪れ、腹腔鏡検査を受けることになった。全身麻酔をかけたうえ、腹部に直径5ミリほ どの穴を3ヶ所あけ、カメラや鉗子などの器具を挿入。卵管や卵巣などの骨盤内の状態を調べた。すると、子宮と直腸の間に、直径1センチ程の黒っぽく変色し た組織が数個、点在しているのが見つかった。子宮内膜症だった。 |
| この病気は、子宮内膜組織が子宮以外の場所にでき、月経痛や腹痛、腰痛などを起こす。だが、Bさんは自覚症状がなく、これまでの検査では分からなかった。 子宮内膜症があると、卵巣や卵管に癒着を起こして機能を損なうほか、精子の動きを妨げたり、受精卵を着床しにくくしたりする。原因不明の不妊の40%は、 子宮内膜症がかかわっているという。 |
| 病巣が小さくても不妊を引き起こすことがあるため、治療が必要。ただ、薬物療法を行うと、薬の影響で治療中は妊娠できなくなる。このため、腹腔鏡検査中に 癒着や病巣などが見つかれば、そのまま手術を行う。電気やメスなどで癒着をはがしたり、内膜症の病巣にたまった液を吸い出したりする。 |
| Bさんの場合も、内膜症の部分を電気メスで切除。この結果、4ヶ月後に妊娠し、昨年、女児を出産した。 |
| 腹腔鏡での手術は、通常1〜2時間かかるが、開腹手術に比べ体への負担は格段軽い。2、3日後には退院でき、すぐ通常の生活に戻れる。 |
| 腹腔鏡検査は、それまでの検査で原因が分からない場合のほか、人工授精しても妊娠に至らなかったり、造影検査で卵管に異常があったりした場合が対象にな る。子宮内膜症のほかにも、卵子が卵巣から排出されずにたまってしまう多嚢胞性卵巣症候群や、卵巣が周囲の組織に癒着し、排卵されても卵子が卵管に到達で きない状態だったーなどのケースが、この検査で見つかる。 |
| 星合さんは、「腹腔鏡で直接病巣を確認できるメリットは大きい。最近、若い女性にクラミジアなどの性感染症が増えている影響で、骨盤内に癒着のある患者も増えていると思われるだけに、腹腔鏡治療は今後、ますます重要になる」と話している。 |
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不妊症治療3
不妊症治療ー最近の事情(3) (読売新聞朝刊 9/14)
| 半数は男性側に原因 |
| 結婚して子供ができないと、かって肩身の狭い思いをさせられるのは妻だった。しかし、不妊症の約半数は、男性側に原因があることが分かってきた。 |
| 神奈川県の会社員Cさん(28)は、結婚して3年たっても子どもができず、妻が92年春、川崎市の聖マリアンナ医大産婦人科を訪れた。しかし、血液検査や画像診断でも異常はなく、Cさんの精液検査で「精子に問題がある」と言われ、同大泌尿器科を紹介された。 |
| 自然な妊娠には、男性の精液1ccにつき精子が2000万個以上あり、動いている精子の割合(運動率)が50%以上ーなどの条件が必要とされる。しかし、Cさんの精子は1ccあたり1500万個、運動率も30%だった。 |
| 泌尿器科教授の岩本晃明さん(56)によると、男性不妊の原因は、このケースのように、精子を作る機能が正常に働かない「造精機能障害」が9割を占める。 Cさんは、視診、触診や超音波検査を受け、「精索静脈瘤」が見つかった。精巣の静脈が、こぶのように拡張する病気で、造精機能障害の原因となる。手術を受 けることになった。 |
| 左下腹部を3センチほど切開、精巣静脈を縛り、血流を他の静脈にう回させて静脈瘤を解消させた。9ヶ月後、精子は1ccあたり6000万個に増え、運動率も70%に上昇。間もなく妻は自然に妊娠し、初めての赤ちゃんが生まれた。 |
| 手術後、6、7割の人は精子の数や動きが改善し、30−40%で妊娠に至るという。 |
| 東京都のDさん(33)は、不妊クリニックの検査で、精液中にまったく精子のない「無精子症」と言われた。「もう子供はできないのか」。ショックを受けな がらも、あきらめきれずに岩本さんのもとへ。詳しい検査で、精子を作るように精巣に働く性腺刺激ホルモンが不足していることが分かった。「なんとかならな いですか」と、不安そうに尋ねるDさんに、岩本さんは「時間はかかるが、ホルモン療法をしましょう」と提案。性腺刺激ホルモンのhMG製剤とhCG製剤の 注射を始めた。 |
| 3ヶ月後、顕微鏡でわずかに精子が見られるようになった。注射は週2回で、通院の負担を軽くするため、勤め帰りに自宅近くの医院で注射を続行。8ヶ月目に精子が1ccあたり4000万個までに増え、結婚7年目で、待望の男の子が生まれた。 |
| 「男性の不妊には、精子の形成機構など未解明な部分も多いが、無精子症でも原因を特定することで治療できるものもある」と岩本さん。 |
| 不妊症では従来、まず妻が一通り検査を受け、異常がないと、ようやく夫が受診するケースも少なくなかったが、これでは原因の特定に時間がかかる上、不必要な治療が行われる恐れがある。 |
| 岩本さんは「不妊症は夫婦の問題。治療を受けるなら、妻は産婦人科を、夫は泌尿器科を同時に受診することが望ましい」と強調している。 |
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不妊症治療4
不妊症治療ー最近の事情(4) (読売新聞朝刊 9/15)
| 日進月歩の体外受精ー顕微授精、未受精卵子の凍結・・・・・でも、限界が |
| 卵子を体外に取り出し、体外で精子と受精させる体外受精で、不妊症治療は大きく進歩した。現在も、新たな技術開発が続いている。 |
| 福島市内の会社員Eさん(29)は、結婚3年目の94年、不妊症で福島県立医大の産婦人科を受診した。腹部の内側を内視鏡で見る腹腔鏡検査で、卵管の周囲が、ひどく癒着していることが分かった。 |
| 開腹手術で癒着をはがしたが、妊娠できない。翌年、不妊を理由に夫から離婚を求められた。別れた夫と新しい妻の間には、すぐに子供が生まれた。「どんな治 療より、この方がつらかった」。2年後、現在の夫に巡り合い、そろって同医大へ。体外受精を受けることになった。「できる限りのことをして、だめらなあき らめよう」。しかし、通常の体外受精では受精せず、98年2月、さらに進んだ「顕微授精」を行った。 |
| 顕微鏡で見ながら、卵子の中に精子を入れる方法で、細い針で1個の精子を卵細胞質内に直接入れる「卵細胞質内精子注入法(ICSI)」が一般的だ。 |
| 同科助教授の柳田薫さん(47)によると、対象は、この治療法以外に妊娠の見込みのない夫婦に限られる。同大で毎年行われる体外受精約500件のうち、半数が顕微授精だ。 |
| 「病院で『妊娠です』と言われた時は、感激で先生の説明に黙ってうなずくのが精いっぱい」とEさん。2度流産しかけたが、男の子が生まれた。 |
| 高齢などで、何度も卵子を採取できない女性が、顕微授精を受けやすくなるよう、未受精卵子を凍結保存する治療も始まった。神戸市の大谷産婦人科不妊セン ター所長の大谷徹郎さん(45)によると、これまで受精卵の凍結は行われているが、受精していない卵子の凍結は技術的に難しい。 |
| オーストラリア・メルボルン大産婦人科のL・クレショバ博士は、瞬時に卵子を冷凍する「硝子化法」を開発。昨年6月、凍結未受精卵子で顕微授精を行い、初 の出産を実現された。同センターは、クレショバ博士を招き、この方法を導入。先月、45歳の女性に初めて実施した。排卵誘発剤で採卵したものの、夫が精神 的ストレスでうまく精子がとれず、妻は年齢的にも、今後採卵できる保証がなかったからだ。「がんで抗がん剤治療や卵巣摘出が必要になったような場合、あら かじめ卵子を採取して凍結しておき、将来、顕微授精に使うことができる」と大谷さんは言う。 |
| ただ、これらの技術の安全性が、すべて確認されたわけではない。ICSIで妊娠しても、流産が少なくなく、重度の先天異常は自然妊娠の2倍、という報告がある。 |
| 山梨医大産婦人科の星和彦さん(53)は、「他の方法で妊娠可能な患者にも安易に体外受精を行うような姿勢は、戒める必要がある」と指摘している。 |
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不妊症治療5
不妊症治療ー最近の事情(5) (読売新聞朝刊 9/16)
| 不安和らげる心のケアー夫婦で協力しあえるように |
| 不妊症治療がめざましく進歩する反面、大半の患者は心身ともに大きな負担を強いられる。そうした患者の不安に対するケアは、これまで置き去りにされがちだったが、ようやく模索が始まった。 |
| 「治療を進めるためにも、患者さんの悩みに向き合うことが必要」。こう話す宮城県・スズキ病院長の東北大名誉教授、鈴木雅洲さん(78)は、患者へのカウ ンセリングを実践している。カウンセリングは助産婦が担当し、治療ばかりではなく、家族関係や経済面など、患者の生活全般に及ぶ。 |
| 30歳の時から不妊症治療を始めた主婦Fさん(38)。夫が精子の少ない乏精子症で、体外受精を行ったが、成功せず、精子を直接卵子に入れる顕微授精を実 施した。この治療も4回続けて受精卵が着床せず、不安は頂点に。助産婦資格を持つ看護婦長の八木橋香津代さん(42)のカウンセリングを受けた。「時間ば かり過ぎていく、このまま顕微授精を続けていいのでしょうか」。Fさんはさらに、母親から「そろそろ治療をやめては」と言われて切ないことや、夫に「治療 するもしないも君次第」と言われ、そうした受け身の態度をもどかしく感じていることを打ち明けた。「ご主人と2人で話さないの?」と八木橋さん。「治療の 話を切り出すのはいつも私。彼からも『次は〇月だね』ぐらい言ってほしい。でも、無理かな。私だって、何ヶ月も先の自分の体のことまで分からないから」 |
| 気持ちが落ち着いたFさんは帰宅後、夫にカウンセリングの内容を話した。すると、「自分も一生懸命に検査に通っている。積極的でないように言わないでほし い」。夫から治療に対する気持ちを聞くのは初めてだった。「君に引きずられて治療している感じもあるけど、それも悪くない、と夫が言って、2人で笑ったん です。こんなことは初めて」とFさん。次の治療への意欲がわいた。「患者さん自身が状況を判断し、自己決定していくことが重要」と八木橋さん。 |
| Fさんにも、「決断」の時が来た。着床に問題があったが、本人の希望で、10回近く顕微授精を受けたものの、妊娠に至らず、経済的にも治療を続けるのが限 界に近づいたからだ。そんな折、引き取り手のない子供が生まれたとの知らせが入った、「2人のどちらの血も受け継いでいない子を養子に迎えるのは、私たち にとっても公平で、いいんじゃないかしら」。Fさんの提案に、夫は賛成した。「できるだけのことはした。これまでの治療は、この子に会うためのプロセス だったと思えます」。新しい「家族」を連れてきたFさんは、そう八木橋さんに報告した。 |
| 不妊症の夫婦それぞれが精神的に孤立していても、カウンセリングにより、治療に協力しあえるようになるケースは少ないくない。八木橋さんは「たとえ治療を断念する場合でも、納得した選択ができるのではないでしょうか」と話している。 |
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多のう胞性卵巣症候群
体外受精で3人出産 (読売新聞朝刊 8/12)
| 誘発剤使わず卵子採取ー東大阪の医院 |
| 大阪府東大阪市の不妊治療施設、IVF大阪クリニック(森本義晴院長)は、排卵誘発剤を使わずに卵巣から採取した未熟な卵子を培養して成熟後、体外受精させて母体に戻す方法で、3人の出産に成功したと11日、発表した。この方法での出産は国内初という。 |
| 出産したのは大阪府内と奈良県内の30歳代の女性3人。いずれも7月から8月に正常分娩で出産し、母体ともに健康。3人は卵巣の外側の膜が厚くなって排卵 しにくい「多のう胞性卵巣症候群」。この病気は排卵誘発剤を使うと、卵巣に障害が起こる副作用の危険が高いため、特殊な針を使って未熟卵子を採取し顕微授 精した。 |
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不妊
不妊治療の悩み詳細に (毎日新聞朝刊 8/27)
| 成功率低い 経済面以上に心身の負担大きい |
| 患者団体男女1390人を調査 |
| 不妊治療に悩む人でつくる「フィンレージの会」が、女性857人、男性533人の不妊治療当事者の体験や疑問、悩みなどを集めた「新・レポート不妊」をま とめた。体外受精や顕微授精などの高度生殖医療に進む人も半数近くいるが、出産に至る例は多くはないことや、心身の負担が大きいことが浮き彫りになった。 当事者の声が、これほど詳細に分析された調査は例がなく、厚生省が今秋にも出す生殖補助医療のガイドラインをめぐる議論にも、一石を投じそうだ。 |
| 調査は昨年1月、同会会員らを対象に行った。35.1歳で結婚9.2年、4.3年間に2.7施設で不妊治療をしたーというのが回答した女性857人の平均 像。現在、治療中の人は3割で、妊娠、出産した▽子供をあきらめた▽しばらく休んでいるーなど、治療を中断した人が7割を占めるのが、この調査結果の特徴 でもある。 |
| ◆治療の経過 |
| 回答者女性の79.0%が性交のタイミング指導から治療を始め、うち2割が妊娠した。しかし出産したのは、タイミング指導を受けた人の7.8%しかいな かった。排卵の時期を見計らい、精液を子宮内に注入する「配偶者間人工授精」は、全体の67.0%が医師から勧められ、そのうちの92.5%が行ってい た。この中の51.4%は6回までだったが、7〜9回14.4%、10〜14回17.5%など回数を重ねている人もいた。その結果、16.4%の人が妊娠 し、出産したのは配偶者間人工授精をした人の7.2%にすぎなかった。このうち5人に1人が治療をやめた。 |
| 現在、治療中の人の47.3%は高度生殖補助技術とされる体外受精、顕微授精を受けている。同会が1993年9月に女性581人で調べた当時、高度医療を 受けたのは治療経験者の約2割しかいなかった。今回調査の治療経験者全体でみると、医師から体外受精などを勧められた人のうち77.0%が最終的に体外受 精や顕微授精を受けており、ここ数年間に高度医療が一般化。普及してきたことがうかがえる。 |
| 一方、受けなかった人に理由を聞いたところ、「そこまでして・・・・」をいう思いを抱いた人が多く、この段階の治療には、何らかの決断を伴うことをうかがわせた。 |
| また副作用についても薬別に詳細に聞いているが、最もポピュラーな排卵誘発剤「クロミッド」でも、4割が腹痛、悪心などの副作用を訴えていた。 |
| ◆心理的な負担 |
| 不妊治療費は「高い」」と言われることが多いが、医療機関に払った金額では、10万円以上50万円未満が29.6%で最も多く、100万円までの人を加えると、55.9%だった。 |
| 妊娠・出産以外で治療を休止した理由でも、経済的負担を挙げた人は3.1%に過ぎず、「心身に負担を感じた」人が31.1%と他を20ポイント以上引き離 していた。治療中の人でも「この世に頑張っても手に入らないものがあろうとは夢にも思わなかった」(34歳)「いつこの苦しみから抜け出せるのか」(32 歳)という声もあった。 |
| ◆技術の容認度 |
| さまざまな技術に対する容認度は、今治療していない人に比べ、治療中の人が全体的に高かった。体外受精は、治療中の92.8%が「賛成」「どちらかといえ ば賛成」と答えたのに対し、治療をしていない人は10.4%ポイント低い。多胎妊娠で胎児を減らす減胎手術は、治療中の41.7%が賛成したが、治療をや めた人は22.2%とほぼ半減した。 |
| データを分析したメンバーの横尾薫さんは「技術への姿勢は、技術への理解度や治療の段階など状況によって全く違う。ガイドラインを考える際には、治療中の人だけではなく、治療をやめた人、やめた後自然妊娠した人など、さまざまな人の意見を吸い上げてほしい」と指摘する。 |
| 報告書「新・レポート不妊」は、イラストや図、漫画を多用し、医師や医療ライターの解説も加え、読みやすい入門書を目指した。メンバーの鈴木良子さんは 「当事者も含め、皆、不妊治療の実態を知らな過ぎる。治療すれば子供ができるとは限らないし、年月を費やす場合も多く、副作用のリスクも負わなくてはなら ない。まるごとのしんどさを知ってほしい」と話している。 |
| B5判、176ページ。希望者は振り込み用紙に住所、氏名と、「新・レポート不妊希望」と書き1810円(送料込み)を郵便振替(00130・7・77074)でフィンレージの会(℡ 03・3711・5054 月、木曜日午後)へ送る。 |
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体外受精4
体外受精、国が指針 (読売新聞朝刊 10/13)
| 研究班発足へ 治療の標準化図る |
| 不 妊治療の柱とされる体外受精について、厚生省は12日までに、治療の適応基準などを定めた指針を定めることを決めた。体外受精が日常的な医療として定着す る一方、早産未熟児や三つ子以上の多胎妊娠が著しく増えるなどの弊害が目立つためという。これまでは各医療機関の自主的取り組みに任せてきたが、「治療の 標準化を図る必要がある」との声が上がっていた。国による不妊治療の指針作りは初めてとなる。 |
| 指針には、不妊に対する社会の無理解や偏見に悩む夫婦も少なくないことを踏まえ、カウンセリングのあり方も盛り込む方針。 |
| 産婦人科医や小児科医ら14人による「生殖補助医療の適応およびそのあり方」研究班(主任研究者、矢内原巧・昭和大名誉教授)を発足させ、来月から全国で実態を調査。年齢や症状などを考慮した指針を来年度までにまとめる。 |
| 日本産婦人科学会によると、体外受精は全国約五百施設が実施。1983年の東北大での1人目以来、98年末までで計47591人が誕生した。 |
| 母体から卵子を採取、体外受精で受精させて子宮に戻す技術で、通常は、検査で卵管に問題がないことを確認したうえ、薬物療法などでも妊娠しない場合に行 う。しかし、患者の求めに応じて性急に実施する医師もおり、出産率は2割以下。卵子採取の際に使う排卵誘発剤の副作用もまれにある。妊娠率を上げるために 多数の受精卵を子宮に戻すと、多胎妊娠を起こし、一部の胎児を消滅させる減数手術が必要なこともある。 |
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不妊治療
不妊治療の選択複雑化 (読売新聞朝刊 3/25)
| 精神面のケア重要にー「カウンセラー」置く病院も |
| 最新の生殖医療技術が不妊カップルに次々と新しい扉を開こうとしている。日本産婦人科学会の倫理審議会が夫婦以外の匿名の第三者から卵子を提供してもら い、体外受精を行う不妊治療を認める中間答申を出すなど、これまでの意識の転換を迫る動きも出ている。しかし、不妊に悩む人たちにとって、どんな治療を、 いつ、どこまで続けるかという選択はますます複雑化している。 |
| 「おめでとうございます。妊娠ですよ」今年1月、大阪府内に住むある夫婦は医師から体外受精の成功を告げられた。不妊治療を始めて10年目。妻は39歳になり、「年齢的にも限界。今回だめだったら、本当にやめよう」と夫婦で確かめ合った後のできごとだった。 |
| 10回の体外受精で500万円以上を費やした。初期の段階で、夫側に原因があることが判明。しかし、現在の治療でより高い成功を望めば、妻への負担は避け られない。「私が悪いわけではないのに、どこまで痛い思いをするの」と割り切れなさを感じながらも、体外受精の日に備え、妻は連日、排卵誘発剤の注射に 通った。注射した腕は手があがらないほど痛み、採卵後の鈍痛にも苦しんだ。 |
| 子ども連れのカップルを見ただけで涙がこぼれ、「半人前」と責める親類の言葉に落ち込んだ。「子どものいない人生もある」とも考えた。 |
| しかし、たった1年で進歩する技術に、あきらめきれなかった。結局、人工授精から体外受精などひと通りを経験し、今回も最新の体外受精技術にチャンスをかけ、「妊娠」に至った。 |
| 「子どもができた今だから、あきらめないでよかったと思える。でも、だめだった場合、次々と開発される医療技術を前に、あきらめきれたかは疑問」と言う。 |
| 10組に1組とされる不妊カップル。体外受精で生まれた子どもは1983年から一昨年までに、累計で約4万7千人を超えたともいわれる。不妊治療技術の進 歩が、逆に苦しみとなるケースも生み出す状況に、多くのカップルがいつ治療をやめるかという問題に直面している。不妊治療を受ける人への医療面と精神的の ケアに乗り出す医療機関も出始めている。 |
| 静岡県浜松市の聖隷三方原病院では、10人のスタッフが産婦人科を敬遠する男性のために、電話や電子メールによる相談事業を行っている。 |
| また、不妊外来を持ち、多くの体外受精を実施している神戸市立中央市民病院では昨年、「不妊プロジェクト」を発足させた。産婦人科医らでつくる民間団体 「日本生殖医療研究協会」(事務局・東京、荒木重雄会長)から医療と心のケアを行う「不妊カウンセラー」に認定された助産婦さんの橋村富子さんを中心に計 6人の看護婦、助産婦がチームを組んでいる。 |
| 不妊外来を訪れた人がどんな思いで治療を始めたのか、治療の経過は。その間の周囲からのプレッシャーや夫婦間のコミュニケーションは。どこまで治療を受け たいのか。そんな心の流れを外来と病棟に分かれ、見守る。その積み重ねの中から、場面、場面で適切な言葉かけや相談に乗っていく体制だ。仕事やそれまでの 生き方、家庭環境などが複雑にからむ問題だけに、将来は不妊に悩む人への専門の不妊相談室も検討している。 |
| とはいえ、こうした医療機関は、まだまだ少数派だ。不妊カウンセラーも現在、全国で100人に過ぎない。橋村さんは「結婚したら子どもができて当たり前と いう今の社会で、不妊治療を受ける人やカップルが自分の思いを整理し、納得のいく自己決定をするまでの道のりは厳しい。これかの人生のありようも視野に入 れた支援につながれば」と話している。 |
| 法的な立場からの議論不十分 |
| 新たに可能性のでてきた「匿名の第三者の配偶子を用いる」体外受精は、さまざまな波紋を広げている。 |
| 中間答申を出した日本産婦人科学会の倫理審議会委員長・武部啓近畿大教授は「卵巣機能不全の患者団体から、提供卵子による体外受精の促進を求める要望が寄せられた。少数の声であればあるほど尊重すべきだと思う」と言う。 |
| しかし、IVF大阪クリニックの森本義晴院長は、実際の運用について首をひねる。「全くの第三者は身体に負担の大きい卵子提供を金銭抜きで実行することは考えにくい。人権の問題もあり、判断に困っている」 |
| 法的な立場からは議論が尽くされていないとの指摘が多い。 |
| 北里大学医学部の家永登講師(家族法)は、40年から実施されている提供精子による人工授精(AID)で生まれた子どもたちの中には、相続をめぐって家裁 の調停になったケースもあることを挙げ、「遺伝的つながりがない以上、子どもの地位に関する法の整備が必要だ」と強調する。 |
| 大阪地裁では98年12月、事前の十分な承認がないままにAIDで生まれた子どもに対して、夫が「自分の子ではない」とした訴えを認める判決が出ている。 |
| 一方、明治学院大学の拓植あづみ助教授(医療人類学)は、不妊治療、医療技術を生み出す背景に目を向ける。「問題は、不妊治療だけが選択肢という社会のあ りようではないか。医師や患者の論理だけでなく、子どものことでしかつながれないカップル文化への問い直しや、子どもを産んでも産まなくてもいいという生 き方をもっと見せることが大切。まず不妊カップルの苦しみへの理解から不妊治療を考えるべきだと思う」としている。 |
| ほとんど規制ない米国 |
| 生殖技術をめぐっては、国によって対応に違いがある。 |
| 世界初の体外受精児が誕生したイギリスでは、90年にヒトの受精と胚研究に関する法を制定、翌年からは政府の認可機関が活動を始めた。 |
| これによると、生殖技術を受けられるのは既婚、未婚にかかわらず男女のカップルで、カウンセリングを必要とする。配偶子(精子、卵子)の第三者からの提供は、本人同意の上、無償で匿名という条件で認められており、代理出産も「商業主義的なもの」でなければできる。 |
| フランスは、生命倫理法(94年)により、受けられるのは「医学的不妊の認められた、生殖年齢にある生きた男女のカップル」、配偶子の提供はイギリス同様「本人同意、無償、匿名」が条件。代理出産は「禁止」とされている。 |
| 連邦医師会指針(85年)と胚保護法(90年)を持つドイツも代理出産は「禁止」。卵子の提供を禁止し、対象者は「医学的不妊の認められた婚姻カップルのみ」だ。 |
| 一方、アメリカは国としての法は持たず、各州法と判例で運用。全体としてみれば、ほとんど規制がないといってよい。生殖技術を受けるのに条件はなく、独身者や同性愛のカップルも利用できる。配偶子の提供もOK、代理出産も10洲で有償の契約を無効としているくらいだ。 |
| 日本の場合は、日本産科婦人科学会のガイドラインが唯一のよりどころ。それによると、生殖技術の対象は医学的不妊の婚姻カップルのみ。代理出産は認められていない。 |
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体外受精児法的保護
体外受精の子 法的保護を (読売新聞朝刊 4/2)
夫婦間以外の第三者が提供した卵子や精子による体外受精の解禁を検討している日本産婦人科学会は、一日、徳島市で開いた理事会で、この治療で生まれた子供 を法的に保護し、親子関係を明確化するため、日本弁護士連合会などと連絡を取り合いながら、法律的な課題をまとめ、その整備を厚生省に要望していくことを 決めた。日本には、こうした生殖医療にかかわる法律が一切なく、解禁の前提として、その議論が必要との指摘を踏まえた。
2009年1月12日|コメント (0)|トラックバック (0)
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