医療ミス
体外受精 患者取り違え (読売新聞朝刊 5/13)
| 石川県の診療所 「似た姓」に卵移植ー95年 20代、妊娠はせず |
| 不妊治療を専門に行う石川県内のクリニックで1995年3月、体外受精させた受精卵を誤って別の女性患者に移植する医療ミスが起きていたことが12日、明 らかになった。名前が似ていた2人の患者を取り違えたもので、クリニック側はミスを認めている。患者は妊娠しなかったが、クリニック側は、妊娠した場合は 中絶せざるを得なかったとしている。83年に国内初の体外受精が実施されて以来、誕生した子供は4万7千人を超えているが、取り違え事故が発覚したのはこ れが初めて。不妊治療施設は急増しており、生殖医療の現場での事故防止対策のあり方が問われそうだ。 |
| クリニックなどの説明によると、取り違えられたのは、富山県在住の当時20代後半の患者で、同じ日に体外受精の治療を受ける予定だった30代の患者の受精卵を誤って子宮内に移植された。患者は半年前から通院しており、体外受精の治療を受けるのは3回目だった。 |
| クリニックでは、この日、3人の患者がナースセンターわきの控室いた。看護婦が手術控室に入る患者の名字を呼んだ際、治療を受けるはずの30代の患者の代わりに、姓が1字違う20代後半の患者が手術控室に入った。 |
| 手術直前には医師が名前を呼んで確認したというが、患者を取り違えていることに気づかないまま、培養室から運ばれた容器から別の患者の受精卵を取り出して移植した。 |
| 治療後、患者を病室に移す途中で、本来治療を受けるはずの30代の患者が控室で待っていることに看護婦が気づき、ミスが判明。すぐに次の患者の治療を中止した。看護婦が名前を呼び間違えたのか、患者が聞き違えたのかは分かっていない。 |
| 医師は患者に謝罪した上で、妊娠の有無が分かるまで約10日間かかることや、妊娠反応があれば薬剤で処置することを説明したという。 |
| しかし、結局、受精卵は着床せず、患者は妊娠しなかった。患者はその後、何度か体外受精を試みたが、現在は治療をやめている。 |
| クリニックでは、「集中力の欠如と慣れのミスの原因」としており、事故を契機に①姓だけでなく、下の名前も確認する②住所や体の特徴、プロフィールなどのデータを覚えるーなどの改善を行った。クリニックの医師は2人で、体外受精では当時5年の実績があった。 |
| 体外受精は、不妊治療法の1つ。卵子を女性の体から取り出し試験管などの中で精子と受精させたうえ、分割した受精卵を子宮内に移植する生殖医療。精子をそのまま子宮に注入する人工授精でも妊娠しない場合に行われることが多い。 |
| 体外受精を行う不妊治療施設は年々増加し、日本産婦人科学会に登録しているだけで約430ヶ所(昨年3月現在)。医師1人だけの施設も少なくない。しか し、事故防止の対策は各施設の裁量に任されている。精子の採取から移植までの全過程を厳しくチェックしている施設もあれば、看護婦が患者名を確認するだけ のところもあり、まちまちだという。 |
| 産婦人科医の95%が加盟する日本母性保護産婦人科医会の市川尚・常務理事の話 |
| 「体外受精での患者の取り違えは聞いたことがない。医会では会員に事故防止の指導をしているが、生殖医療の分野は特別な専門技術の世界で、立ち入りにく い。同じような事例が続くなら、報告を義務づけることも必要になるが、医事紛争化するケース以外、医療機関からミスが報告されることはない」 |
| プライバシーと専門性の壁ーミス表面化しにくく |
| 体外受精で患者を取り違える信じられない初歩的ミスが、最先端医療の現場で起きていた。だが、こうした事態を懸念する声は、以前からあった。 |
| 今回のケースは、昨年1月に横浜市大病院で起きた患者取り違え事故と共通する。いずれも二重、三重にチェックする機会がありばがら、医師も看護婦も結果的に確認を怠っていた。 |
| 高度医療の典型でもある生殖医療の分野は、二重の意味で「聖域化」されてきた。 |
| 弟一に、産婦人科医療の中でもこの分野はとりわけプライバシー保護が重視されている。患者側には治療自体を知られたくないとの意識が強く、ミスが起きても表に出ることは少ない。 |
| 弟二が専門性の壁だ。最近では「密室医療」への批判から医療情報を開示する動きが加速しているが、生殖医療は専門性が高い特殊な領域で、個々の医療現場に 学会なども口をはさみにくいとされてきた。このため、先進的な事故防止対策の取り組みもなかなか他の施設に普及しない。 |
| 日本産婦人科学会は今年1月から、体外受精を行う全国の施設の医師数や経験年数、設備などを審査して登録する制度を導入。実施結果の報告も義務付けている。 |
| こうした取り組みをさらに進め、医療ミスなどの情報についても報告し、防止策を共有するシステムづくりが早急に求められている。 |
2009年1月12日|コメント (0)|トラックバック (0)
カテゴリー:ぴかり!最新TOPICS
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